これは私が大学生ときに本当にあった出来事です。
私は大学2年生のときに1年間ほど雀荘でアルバイトをしていました。
その時の体験談です。
その雀荘は4階建ての雑居ビルの2階の隅にあり、雀荘の他には1階に靴屋さん、他の階にはレストランや喫茶店が入っていました。
アルバイトの勤務時間は、夜10時から最後の客が帰るまで。
ワンオペで、仕事が終わる時間はだいたい深夜1~2時ぐらいだったと記憶しています。
その雑居ビルは、深夜12時以降は電子ロックが付いた裏口からでしか出入りできません。
出入りするためには暗証番号が必要で、そこで働く人しか知りません。
深夜12時以降に帰る客がいれば店員が裏口まで客を案内して、ビルの外まで見送ることがルールになっていました。
深夜まで営業している店は、その雀荘だけだったので、最後の客を見送った後は、ビルの中には私しか居ないことになります。
その日も最後の客を見送った後、雀荘で出たゴミを外のゴミ置き場に運ぼうとしたときでした。
1階に続く階段を降りようとしたとき、
コツン コツン コツン ・・・
誰もいないはずの1階から、誰かが階段を上ってくる音が聞こえてきました。
階段の照明もつけずに…。
私の脳裏には、数日前に観たゾンビ映画のワンシーンが甦りました。
強烈な恐怖を感じ、
その場を離れようとしましたが、余りの恐怖のため、足に全く力が入りません。
私は一歩も動くとことができず、ゴミ袋を持ったまま、その場に立ち尽くすだけでした。
そうこうしているうちに、闇の中で動く物体の輪郭が見えました。
それは『犬神家の一族』に出てくる帰還兵のように見えました。
この時、私の恐怖心は最高潮に達しました。
オシッコをちびりかけたのを覚えています。
次の瞬間、上ってくる物体の正体を悟りました。
警備員さん
上ってくる物体の正体は、ビル巡回警備中の警備員さんでした。
帰還兵に見えたのは警備員さんの制服でした。
警備員さんは、無言のまま私とすれ違って、また暗闇の中に消えていきました。
以前、このビルで自殺した警備員がいたとか、いないとか。
おしまい。